『トラブル・ガール』監督オフィシャルインタビュー

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──映画監督を目指されたきっかけはどのようなものでしたか?

最初にそのような考えを持ったのは、高校の演劇部で寺山修司監督の『田園に死す』を観たときでした。内容を完全には理解できなかったものの、自由や反抗的といったものが持つ美しさに触れたことで、その後の人生にも何かしらの影響がありました。それはもうずいぶん前の話ではありますが、素晴らしい作品は時空を超えて人々の心に残るものです。そしてこれが、長年広告ディレクターとして活動する中でも脚本を書くことを諦めなかった理由でもあります。何かを残せたらいいな、と思い続けていました。今では機材の進化により、映画制作の可能性や利便性が広がりましたが、心に残る良い作品はそういったことに左右されません。それらは美しいほどのシンプルさを持ち、そこから生み出される崇高さこそが、遠い存在でありながらも、憧れを抱かせるのです。

──監督にとって初長編作となる本作ですが、ADHDの少女について描こうと思った理由を教えてください。また製作にあたり、なにか参考にした、影響を受けた作品はありますか?

これは、私が初めて完成させた長編脚本です。執筆したのは、ちょうど子どもが小学校に上がった頃で、子どもが集団にどう溶け込んでいくかという過程が、当時の私にとって身近な体験であったと同時に、社会を理解するための拡大鏡のように感じられました。ADHDの特徴の1つとして、医学界でそれが「病気」と呼べるのか議論が続いているという点があります。これはまるで『裸の王様』のように、周囲の人々が真実を無視するような様子を浮き彫りにしています。脚本を練り上げる過程で、ダルデンヌ兄弟の映画や相米慎二の見事な長回しからも多くのインスピレーションを得ました。

──母と子どもの関係、そして教師ポールとの3人の関係を描く際に、大切にされていたことはありますか?

母娘はお互い鏡のような存在です。ADHDの少女を演じたオードリー・リンは実際にはとても落ち着いており、一方で母親役のアイヴィー・チェンはエネルギー溢れる俳優です。2人の気質を入れ替えても物語は成立しますが、この組み合わせであることで、問題を抱えているのは子どもなのか、それとも周りの人々なのかを客観的に考えさせられます。教師は第三者でありながら母娘の問題を解決することは出来ず、むしろ自分自身の方がより多くの問題に悩まされているかもしれません。最初のプールのシーンで、教師は少女に泳ぎ方を教える際に嘘をつきますが、少女は結果的にそのおかげで泳ぎ方を習得します。これは、私たちが教育を受ける過程が、ある意味で嘘に順応する状態であることへの暗示でもあります。この物語は、教育システムの中ではみ出し者となった3人が家族を築こうとし、互いに温め合いますが、最終的には失敗に終わってしまうのです。